君の為に紡ぐ「」-Voice02-
今日はカフェが休みで何もすることがなく、暇だったので偶には図書館でゆっくり本でも読もうかと思い立ち出掛けることにした。
この外見からして色々と誤解されやすいが意外と俺は本が大好きだったりする。見たこともないような美しい景色や、どことも知れない遠くの地へ本は連れて行ってくれるから好きだ。
--っと、出掛ける前にキラーに言っとかねぇと
心配っすっからな・・・
「なんだ、キッド出掛けるのか」
すると丁度部屋から出てきたキラーに声をかけられた。
『ん、ちょっと図書館までな・・・』
「そうか気を付けてな」
---わしゃわしゃわしゃ
『っおい、や め ろ!』
「ぁあ、すまんすまん」
ったく、毎度毎度人の頭を撫で回すのはいい加減に勘弁して欲しい。
『・・・じゃぁ、行ってくっからキラーも仕事ほどほどにしとけよな』
「あぁ分かっている」
はぁ・・・溜息をつきながら家をあとにし、俺は図書館へと向かう。
今日はどんな本を読もうか・・・そう言えばこの間読んだ作家の新作がでてたな、あの本は面白かったなぁ
・・・でも最近ミステリーとか読んでねぇし久々にミステリー系もいいな・・・とたちまち俺の頭の中は読みたい本の事で一杯になった。
・・・そして、その図書館で俺はアイツに出会う
気が付けば夕方になっていた。
あと1冊読んで帰るか・・・と読み終えた本を閉じようとした時、視線を感じ振り返るとそこには藍色の髪をした青年が此方をジッと見つめ佇んでいた。夕陽のせいか若干、頬が赤みがっかて見えた。
此方を見つめたまま動かないので、俺が怖い人間(この髪でこの顔だし・・・)に見えたのかと思い、なるべく怖がらせないように席をすすめてみた。
・・・が、物凄い勢いで逃げられた。
俺は暫く唖然としていたが、なんとなく彼に悪い事をしてしまったように感じ、メモを残していく事にした。
海のような藍色の髪と同じくらい印象に残った彼の赤みがかって見えた頬・・・どことなく可愛く思えた。
夕陽色の頬をした君・・・
我ながら何とも言えない小っ恥ずかしい・・・
まぁ・・・いいか、また会うかも・・・ましてや相手がこのメモを読むかわからねぇし
本当はもう一度会いたいと思っている自分には気付かないふりをして、そして期待をして
俺は文字を綴った・・・
--コンコン
『・・・ただいま』
「あぁ・・・お帰り」
『おい、その手に持ってるのとデスクの上に山の様に置かれてるヤツはなんだ?』
「はは・・・頭使いすぎて糖分をと思って・・・な」
『ったく、だからってんなに食ったら糖尿病になんぞって何回言わせんだよっ、バカキラー!!』
「あ、その・・・違いない」
--はぁ
「それはそうと今日は帰るのが早かったんだな。いつもは閉館ぎりぎりに図書館出るだろ?」
珍しいな--とキラーが呟いた。
『ん?ぁあ、ちょっとな』
「何かいい事でもあったか?」
『ぁ、なんで?』
「顔に書いてある。なんだ、いい人でも見つけたか」
くつくつと笑いながら言うキラーの言葉に俺の頭に浮かんできたのは今日、図書館であったあの青年だった。
と同時にぶわっと顔が熱くなるのを感じた。そしてなんだか恥ずかしくなり・・・
『違ぇよ!んなんじゃねぇーよっ!!』
キラーに盛大に文句を言ってやった。
「ははは、分かりやすいなーキッドは・・・おっと、そんな怖い顔するな」
--さて、コーヒーでも淹れて来るか・・・そう言い残しニヤニヤ笑いながら去って行くキラーに若干の殺意を覚え、コーヒーと言ってもどうせミルクたっぷり砂糖たっぷりの劇甘な甘ったるいものに違いないと思い、後でミルクと砂糖を・・・否、家中の甘味という甘味を全て破棄してやろうかと心の中で思うキッドであった。
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